やさしい医学リポート

孤独感を感じている高齢者ほど、身体機能の低下や死亡のリスクが高いという論文が、内科学アーカイブスに6月公表された。

研究で使われたのは、つぎの3つの質問。

1.「取り残されている」と感じることは?
まったくない/ほとんどない  ときどきある  よくある
2.「孤立している」と感じることは?
まったくない/ほとんどない  ときどきある  よくある
3.「人との交わりに欠ける」ことは?
まったくない/ほとんどない  ときどきある  よくある


3つ質問の答えがどれも「まったくない/ほとんどない」場合は「孤独感なし」、それ以外の場合は「孤独感あり」と、研究者らは分類した。

研究者らは2002年、米国の60歳を超える高齢者1,604人に3つの質問をした。対象者の43%が「孤独感あり」、57%が「孤独感なし」と分類された。その後2008年まで追跡調査を行った。

その結果、「孤独感あり」のグループは、「孤独感なし」のグループと比べて、死亡率が高かった(22.8%と14.2%)。

さらに、食事や着衣などの日常生活動作が低下した割合(24.8%と12.5%)や、肩より上に腕を挙げるなどの腕の機能が低下した割合が高く(41.5%と28.3%)、階段を昇る力が落ちた割合も高かった(40.8%と27.9%)。

こうした結果は、「孤独感あり」のグループのほうが、独り暮らしの割合やうつ症状の割合が高いなどの点を考慮して分析しても、変わらなかった。

「孤独感」と老化・死亡リスクの関係
図1


著者らによると、「独り暮らし」や「結婚しているか否か」といった社会的孤立についての客観的な状態と死亡との関係を調べた研究は少なくないが、主観的な「孤独感」が健康や死亡におよぼす影響を調べた研究はほとんどないという。

研究の限界として著者らは、孤独感についての質問を最初に1回しかしていないので、孤独感があることが原因で健康の悪化という結果が生じるだけではなく、健康の悪化が原因で孤独感という結果が生じる部分を完全に区別できていない可能性などを指摘している。

ふつうは医療の問題とは考えられていない「主観的な孤独感」をテーマに取り上げて、身体機能の低下や死亡率の上昇という健康への影響の可能性を示した点に、今回の研究の意義があるだろう。

「孤族の国」などと言われる日本人ではどうだろうか。健康に影響があってもなくても、高齢者の孤独感をやわらげる社会的方策を考えるべきだろう。


坪野吉孝 (つぼの・よしたか)

1962年、東京都生まれ。東北大学医学部卒。国立がんセンター研究所、ハーバード大学公衆衛生大学院、東北大学大学院教授(法学研究科、医学系研究科)を経て、現在、早稲田大学大学院客員教授(政治学研究科ジャーナリズムコース)。主な著書に「検証!がんと健康食品」(河出書房新社)、「食べ物とがん予防―健康情報をどう読むか」(文春新書)、「『がん』になってからの食事と運動」(法研)など。

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。
ご病気やご症状、医療機関などに関する個別具体的なご相談にはお答えしかねます。あらかじめご了承ください。

ページトップへ戻る

サイトポリシーリンク個人情報著作権利用規約特定商取引会社案内サイトマップお問い合わせヘルプ